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映画『法廷遊戯』

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映画『法廷遊戯』
Ⓒ五十嵐律人/講談社 Ⓒ2023「法廷遊戯」製作委員会

-Story-

法曹の道を志す者たちが学ぶ、法科大学院=別名・ロースクール。そのゴールにある司法試験は国家試験の最難関といわれていて、そもそも受験資格自体、ロースク―ルを卒業するか、予備試験に合格するかでないと得られず、法律の知識を有する受験資格を得た者であっても合格率はわずか 20~40%に過ぎない。名門・法都大学のロースクールに通う“セイギ”こと久我清義もまた、平均勉強時間 5000 時間の法律漬けの毎日を送っていた。そんなある日、セイギの過去を暴くビラがばら撒かれる。それは当時 16 歳の彼が、殺人未遂の疑いで逮捕されていたというもの。児童養護施設の出身だったセイギは、共に施設で育った織本 美鈴を守るために、施設長を刺していたのだ。その美鈴もセイギと行動を共にしてロースクールの同級生となっていたが、彼女もまた何者かから嫌がらせを受けていた。犯人探しに動き出したセイギは、生徒たちの間で繰り広げられている裁判ゲーム“無辜ゲーム”の主宰者・結城馨も脅迫を受けていたと知る。司法試験合格後、弁護士となっていたセイギは、久しぶりに無辜ゲームを開くという馨に呼び出されて、その会場を訪れる。そこにいたのは馨と美鈴だけだったが、馨が血を流して息絶えているのに対して、美鈴はナイフを手に返り血を浴びて放心していた。「お願い、清義。私を弁護して」。 無罪を主張する美鈴は証拠となる SDカードをセイギに託しながらも、一切の供述を拒み、黙秘を貫く。一方、セイギは、馨の足跡を追う中で、彼の亡き父親とかつて相対していたことを知る。殺人未遂だけではない、セイギと美鈴の隠された過去。そして、馨、セイギと美鈴の秘められた因縁。それに気づいたセイギは、美鈴の第一回公判で法曹関係者もマスコミも驚かされる意外な弁護に打って出る。接見の際に美鈴が口にしていた、「これは、結城くんが仕掛けた最後のゲーム。ゲームのプレイヤーは貴方なの」の言葉。SD カードに収められたデータが公開されて、事件の様子が明らかとなるが、そこでセイギはさらなる驚愕の事実にたどり着く。二転三転する真実。四転五転する真相。ゲームさながらに次々と局面が変化し、勝者とジョーカーが入れ替わっていく中、セイギは己のすべてを懸けて究極の選択を取る。セイギの悔い、美鈴の狙い、馨の想い、そして無辜=罪のないことを意味する言葉を冠した裁判ゲームが意味していたもの。果たして本当に罪を犯したのは誰で、本当の罰を受けるべきなのは誰なのか。3人がこのゲーム=法廷に見出した答えとは何なのか。ついに訪れた判決宣告期日。セイギはある確信と不信を持って、裁判長の判決を耳にする。

伊藤さとり’s voice
伊藤さとり’s voice

裁判モノはエンターテイメントとの相性が抜群だ。世界中で、ミステリー小説やドラマ、映画にも登場する法廷シーン。特に映画やドラマでは、その犯罪が起こってしまった人間の心理を回想シーンや表情、声のトーンで観客に伝えられるので、「正義とは何か」という深い問いを多くの観客の心に残せる興味深い題材だ。

それを弁護士の五十嵐律人氏が、自身にしか描けないのロースクール体験時を盛り込んだ切り口で、弁護士志望の学生達の裁判ゲームから事件に発展するという新たな視点で書かれた小説は、第62回メフィスト賞を受賞。この原作を『白夜行』『神様のカルテ』といった若者の心に焦点を当てる青春映画の名手・深川栄洋監督が、フレッシュなキャストを揃えて映画化した『法廷遊戯』が11/10から公開となる。

まさに頭脳戦と言える会話劇が冒頭にあり、弁護士になるには知識だけでなく、頭の回転と弁が立つ事も必要であると観客は知る。このロースクールで際立つ存在としてスクリーンに登場する北村匠海、そして影のある杉咲花、語り部となる永瀬廉。3人ともどこか謎めいている雰囲気を持つのはこの3人が事件に関わる人物であり、事件解明には彼らがどんな性格でどんな生育環境だったかが明かされなければならないからだ。

一見、簡単に解明されそうな事件を、これでもかと掻き乱す、時折見せる杉咲花のとても小さな笑みが不気味。それはまるで『羊たちの沈黙』を彷彿させる印象深いショットとなっている。まさに人間の心理を探る勉強にもなる娯楽作。目の前のニュースを鵜呑みにすると、人間関係の複雑さや、彼らの生育環境から構築された思考を見落としてしまうかも。法廷モノが伝えようとする“審判だけが正解ではない”というメッセージを映画から受け取ってほしい。

映画『法廷遊戯』
2023年11月10日(金)全国公開

出演:永瀬廉(King & Prince) 杉咲花 北村匠海
   戸塚純貴 黒沢あすか 倉野章子
   やべけんじ タモト清嵐
   江本明 生瀬勝久 / 筒井道隆 大森南朋 ほか
原作:五十嵐律人『法廷遊戯』(講談社文庫)
監督:深川栄洋 脚本:松田沙也
主題歌:King & Prince「愛し生きること」(UNIVERSAL MUSIC)

映画『法廷遊戯』
Ⓒ五十嵐律人/講談社
Ⓒ2023「法廷遊戯」製作委員会