自分が感じる〈幸せ〉を、大切に味わいたい貴方へ
-Introduction-
第81回米アカデミー賞外国語映画賞をはじめ国内外問わず数々の賞を総なめにした映画『おくりびと』(08)の脚本家であり、斬新なTV番組を数多く企画・構成する放送作家、さらには、ご当地キャラクターブームを牽引した「くまモン」の生みの親など、ジャンルを問わない企画のプロフェッショナルである小山薫堂。その小山が日本特有の入浴行為を文化の一つとして捉え、2015年に提唱した「湯道」が、自身の完全オリジナル脚本で奇跡の映画化!亡き父の遺した古びた銭湯を巡って反目し合う兄弟、ある事情を抱え、その銭湯で働くヒロイン、「人の道は『湯』に始まり、『湯』に終わる」という「湯道」に魅せられた定年間近の郵便局員、フィアンセの父親と「ハダカノツキアイ」に挑む外国人、仙人と呼ばれた謎の老人、一癖も二癖もある登場人物たちが銭湯に大集合!!まるで湯気のように立ち上り、揺れ動く彼らの人間模様を、笑いと涙の群像劇としてスクリーンに描きます。2023年春、心も身体もシットリ感動、ホッコリ幸せな気分に整う、“お湯”を愛する全ての人々に贈るお風呂エンタメが誕生する!!
-Story-
亡き父が遺した実家の銭湯「まるきん温泉」に突然戻ってきた建築家の三浦史朗(生田斗真)。帰省の理由は店を切り盛りする弟の悟朗(濱田岳)に、古びた銭湯を畳んでマンションに建て替えることを伝えるためだった。実家を飛び出し都会で自由気ままに生きる史朗に反発し、冷たい態度をとる悟朗。一方、「お風呂について深く顧みる」という「湯道」の世界に魅せられた定年間近の郵便局員・横山(小日向文世)は、日々、湯道会館で家元から入浴の所作を学び、定年後は退職金で「家のお風呂を檜風呂にする」という夢を抱いているが、家族には言い出せずにいた。そんなある日、ボイラー室でボヤ騒ぎが起き、巻き込まれた悟朗が入院することに。銭湯で働いている看板娘・いづみ(橋本環奈)の助言もあり、史朗は弟の代わりに仕方なく「まるきん温泉」の店主として数日間を過ごす。いつもと変わらず暖簾をくぐる常連客、夫婦や親子。分け隔てなく一人一人に訪れる笑いと幸せのドラマ。そこには自宅のお風呂が工事中の横山の姿も。不慣れながらも湯を沸かし、そこで様々な人間模様を目の当たりにした史朗の中で凝り固まった何かが徐々に解されていくのであった……。
伊藤さとり’s voice
茶を振る舞う伝統的な作法「茶道」のみならず、本やドラマの影響でサウナを極める「サ道」という言葉まである昨今。ならば「湯道」だってあっていいはずだ。本作『湯道』は大の風呂好きである小山薫堂氏が構想7年という歳月を経て企画・脚本を担当した映画であり、生田斗真を主演に迎え、「風呂」をこよなく愛する人々の愛の物語だ。
とはいえ生田斗真の役は風呂を愛しているかといえばそうではなく、実家の銭湯を継がなかった長男で建築家の史朗。銭湯の店主は濱田岳演じる弟・吾朗だ。史朗は銭湯を畳んで自分のデザインしたマンションに建て替えようと実家に戻ってきたものの、銭湯を手伝ううちに常連の姿を見て「銭湯」という「居場所」の大切さに気付かされていく。
実はこの映画、「お風呂」の魅力はもちろんだが、「人生の喜び」を一番に描いている。だから登場人物が多く、連れ立って銭湯に来る様々な夫婦の姿や、銭湯を愛する親子の姿などが彼らの家族への想いと共に憩いの場として銭湯が綴られる。それと同時に「湯道」を極める家元のところに通う男性や温泉評論家が登場するのがコントラストになっているのだが、これにより「良さとは」を解く映画になっているのだ。
「お風呂を極める」とは果たして良い温泉に沢山入ることなのか?それとも「風呂の正しい入り方」を知ることなのか?風呂通、評論家が太鼓判を押したら良い風呂なのか?この映画を観ると「楽しんだ者勝ち」という感情が溢れ出してくる。お風呂の楽しさもお風呂から得る幸せもその人の中にしかないし、それは彼ら彼女たちが何に喜びを見出しているのかだけ。“幸せはひとそれぞれ”なのだ。風呂上がりのコーヒー牛乳、風呂の中での歌、一緒に行く人、また行きたいと思う「居場所」があるって最高の幸せ。映画を観ると俳優陣の至福の表情に「幸せな気分」を味わうのも映画から得る幸せだった。
映画『湯道』
2023年2月23日(木・祝)全国ロードショー
出演:生田斗真 濱田 岳 橋本環奈
小日向文世/天堂よしみ クリス・ハート 戸田恵子 寺島 進
厚切りジェイソン 浅野和之 笹野高史 吉行和子 ウエンツ瑛士 朝日奈央
梶原 善 大水洋介 堀内敬子 森カンナ 藤田朋子 生見愛瑠
吉田鋼太郎 窪田正孝 夏木マリ 角野卓造 柄本 明
企画・脚本:小山薫堂
監督:鈴木雅之
音楽:佐藤直紀