【佐藤寛太】映画『Blind Mind』人と人の〈繋がり〉から生まれた優しい等身大の恋物語

佐藤寛太

【佐藤寛太】
映画『Blind Mind』
人と人の〈繋がり〉から生まれた
優しい等身大の恋物語

もっと近く、もっと深く、誰かを「知りたい」と願う時、〈繋がり〉は一本の糸となって、相手の元へと届けられる。その糸の先を掴むのか掴まないのか、はたまた気づくのか気づかないのか、不確定な運とタイミングの産物が〈縁〉だったりする。目には見えない糸、感覚的に香る糸を、私たちは結び続けて生きてゆく。これは〈繋がり〉の意図が結んだ、とある恋の物語。

映画『Blind Mind』

映画『Blind Mind』

-Story-

「美しい」って何だろう—。恋に無欲な盲目の青年と、ルッキズムに苦しむインフルエンサーの少女。互いに見えない”鎖”をほどき合う、小さな出逢いの物語。盲目の満井祐は、周囲の人々と関わりながら日常生活を送る。しかし、恋に旺盛な同居人・ジェリーと対照的に、自分は恋とは無縁だと言い切る祐。 ジェリーの言う「美しい」 がピンとこない。一方で、SNSインフルエンサーの仲道フミカもまた、その言葉の檻に囚われていた——

-Introduction-

盲目の主人公・満井祐役を演じたのは、『軍艦少年』『いのちスケッチ』などで熱演光り、近年は映画だけでなく TV ドラマでも活躍を続ける劇団 EXILE の佐藤寛太。外見至上主義に囚われるヒロイン・仲道フミカを演じたのは、『キセキ‐あの⽇のソビト‐』『恋は光』などで透明度抜群、唯⼀無⼆の瑞々しい存在感を放つ平祐奈。共演には、モクタール、芦沢ムネト、アベラヒデノブ、椿原愛、原あや香、平井珠生、副島和樹といった個性派俳優が顔を揃えた。『お⽿に合いましたら。』『雪⼥と蟹を⾷う』などで知られる脚本家・灯敦⽣が、佐藤寛太を当て書きとして、⽇本⼤学藝術学部映画学科の同級⽣である⽮野友⾥恵監督へ書き下ろした⼀作。⽮野友⾥恵監督にとって、本作が初監督作品となる。どこにでもある男女の出逢いが、ユーモアと優しさに包まれながら、初めての感情に変わってゆくボーイミーツガール。

-満井 祐-

周囲の人々と関わりながら日常生活を送る、
恋に無欲な盲目の青年。

佐藤寛太

『Blind Mind』× 佐藤寛太

今作の脚本家である灯さん(灯 敦生)とはデビュー当時からの仲間で、よく集まって話す友人だったんです。そんな灯さんから何気なく「ショートフィルムを作らない?」と連絡が来たのが『Blind Mind』のはじまりでした。僕も「いいね、やろう」と二つ返事で返信をして。その後、脚本が送られてきて初めて「あ、作品っぽいものを作るんだ」と認識したんです。脚本を読んで「この物語の中に一体何を詰め込もうとしているのだろう」というワクワク感を感じたのを覚えています。

キャスティングの時点から、
作品の背景にある人と人の〈繋がり〉を感じます。

僕らの仕事は、すでに出来上がっている企画があって「この作品の中の、この役を演じてください」というお話が来ることが普通なのですが、今回は灯さんが「こんなプロジェクトがあるから、役者として参加して欲しい」というオファーをくれたんです。それを聞いて、共演経験のあった祐奈ちゃん(平祐奈)に「こういった企画があるんだけど、台本を読んで、もし興味とスケジュールの空きがあれば、一緒にやってくれない?」と相談したら、すぐに「いいよ!」と回答をくれて。キャスティングなど、本当に手作りで進めていった作品だったので、ゼロから作り出すプロジェクト自体にすごく楽しさを感じました。

佐藤寛太

繋がりのある方々が集まって作品を生み出す。
きっと、他の現場とは違う青春感がありますよね。

そうですね。制作段階から関わらせてもらう機会はなかなかなかったので、みんなで一緒になって現場を作り込むことができて本当に楽しかったです。作品作りが好きで集まっている人たちばかりの空間は本当にキラキラしていて。居心地のいい、明るくやりやすい現場でした。

灯さんの描かれた『満井 祐』は
どんな男の子でしたか?

祐は友達と2人暮らしをしている男の子で、目が見えないことをハンデだと思っていない子。だからこそ、周りの人たちに過剰に扱われたくない気持ちが強い人でもあります。祐は全盲ではなく、部屋の明暗が分かるくらいの視力は持っていて、ハッキリとは見えなくとも誰かがいることは何となく分かる、といった裏設定を意識して役を作っていました。

佐藤寛太

祐を演じるうえで
佐藤さんが大切にしていたことは何ですか?

クランクインする前に、視覚障害者の方の映画やドキュメンタリーを観て、どういった部分を祐に落とし込もうか考えたのですが、その結果、健常者と同じ仕草をすることを意識しました。彼は目が見えないことをハンデだと思っていないので、人と話す時にハンディキャップを相手に感じさせたくないんじゃないかな、と思ったんです。祐って健常者と同じような会話の間隔や姿勢で話を聞くために、きっと一人で練習しているような男の子だと思うんですよ。もちろん、視覚障害者の青年を演じるうえでの心構えは必要でしたし、情報も集めたけれど、そのうえでなるべく健常者のように振る舞うことを大切に演じていました。

佐藤さんが『Blind Mind』を一言で表すとしたら
何と表しますか?

〈繋がり〉ですかね。繋がりって目に見えないものじゃないですか。お互い見えているから繋がっているわけではなくて、雰囲気や空気、匂いとか、そういった可視化できないもので人と人は繋がっていると思うんです。そういった〈繋がり〉が『Blind Mind』という作品には丁寧に描かれているんじゃないかと思います。

佐藤寛太

そのテーマは演じていくうちに見つけたものですか?
それとも、最初からそうだと感じていた?

制作陣でテーマを話し合うことは特にしなかったのですが、僕の場合は完成した作品を観た時に〈繋がり〉というテーマを感じました。撮影中、僕はフミカ(平 祐奈)のシーンを観ていなかったので、彼女のルッキズム的な考え方が表れているカットを知らない中で、2人のシーンの撮影をしていたんです。一本の映画として、盲目の青年と、ルッキズムで見える物を大切にする彼女のラブストーリーを観た時に「人と人がどう繋がるのか」が描かれている作品だな、と思ったのを覚えています。

そんな2人が出逢うことで〈変化〉が生まれる今作。
最後に、佐藤さんに最近生まれた
〈変化〉を教えてください。

僕は、環境や人に恵まれることがすごく多かったおかげで〈変化〉できたと思っていて。自由奔放に生意気を言っていた時、傍らで先輩たちが見守ってくれていたり、時には叱ってくれる人がいたり、そういった人や環境を通して、別の立場に立って物事を考えることができるようになったんです。もちろん今でも大切にしたい自分の思いはあるけれど、「それぞれの観点での正義があるんだな」と思えるようになったのは大きな〈変化〉でした。

佐藤寛太

決して妥協からきた〈変化〉ではなく、
良い意味で相手の視点を信用していく、
といった〈変化〉ですよね。

今までは「自分はこういう人間だから」と、やってこなかったようなことに対して、他の立場に立って「そういう考え方もあるよね」と考えられるようになったんです。丸くなったというよりは、それぞれの場所から考えた時の展開が見えるようになったといいますか。ただ、それでバランス感覚だけがよくなってしまったらつまらないと思うので、自分の個性をなくすことなく、自分も周りも気持ちよく仕事ができる環境を生み出せる人でありたいと思います。

佐藤寛太

佐藤寛太(26)

さとう かんた

1996年6月16日生まれ。
描かれた物語、説かれた智恵、
手のひらに広がる〈言葉〉に恋し、吸収するDOER

映画『Blind Mind』

映画『Blind Mind』
シネマート新宿にて2023年1月6日(金)より二週間限定公開 他、順次上映

出演:佐藤寛太 平 祐奈
   モクタール アベラヒデノブ 芦沢ムネト
   椿原 愛 原 あや香 平井珠生 副島和樹
監督:矢野友里恵
脚本:灯 敦生

Staff Credit
カメラマン:作永祐範
ヘアメイク:KOHEY
スタイリスト:平松正啓
インタビュー・記事:満斗りょう
ページデザイン:古里さおり