映画『遺書、公開。』
日に日に増す緊張感の中、
教室の一角、互いの席で芝居を紡いだ
2人の生徒の対談、公開。
大好きなあの人も、ちょっと苦手なあの人も、他人に見せているのは表層部分だけ。一枚層をめくれば、少し知られたくない自分が出てきて、もう一枚層をめくれば、絶対に知られたくない自分が出てくる。そして一番深い層の先にいるのは、〝自分も知らない本当の自分〟。人間は多面的だけじゃはかれない、多層的な生き物。奥底に眠る私たちの顔は、一体どんな顔なのか――スクリーンの前、あなたの〈層〉も、そっと剥がれてゆくことでしょう。さぁ、順番がまわってきました。教壇の前へどうぞ―···
映画『遺書、公開。』

2年D組の皆さんにつけられている数字。
それは、序列です——
1学期の春、2年D組に突如送られてきた【序列】──そこには生徒と担任の全員の明確な順位が示されていた。タチの悪いイタズラだとしたら、誰が何のために決めたものなのか?犯人が分からないまま時は過ぎ、ある日──誰もが羨む序列1位の姫山椿が学内で自殺した。そして葬儀の次の日、クラス全員に姫山からの遺書が届く。死んだ姫山の遺書がなぜ教室に? 1位の彼女はそもそもなぜ自殺したのか? 遺書は本当に姫山が書いたのか?衝撃の事態の中、姫山の自殺の真相に迫るべく、24人全員が自分の遺書をクラスメイトの前で公開することになる。だが彼らは知らなかった。その日から、学級崩壊までのカウントダウンが始まってしまったことを…!死者から明かされる衝撃の真実を、あなたは知りたいですか?それでは、遺書公開を始めます。
序列19位:池永柊夜役
吉野北人

鉄道が趣味。20位の廿日市、18位の名取と過ごすことが多い。それほど序列を気にしているようにも見えないが、姫山とかつて何かがあったのか、自殺の真相には興味を持っている。
×
序列2位:赤﨑理人役
松井 奏(IMP.)

サッカー部。遺書を姫山のものと信じ、最初に遺書を公開。勉強もスポーツもソツなくこなし、1位の姫山にふさわしい完璧な彼氏で、誰もが羨む理想のカップルと思われていた。
映画『遺書、公開。』
×
吉野北人 松井奏(IMP.)
LANDOER:とにかく最後まで何が起こるか分からない本作。台本を最初に読まれた時の率直な感想を教えてください。
吉野北人(以下、吉野):キャストが多い分、展開がたくさんあって、読みごたえがありました。自分が演じる役(池永柊夜)ですら「分からない」が続いていくので、読みながら柊夜を疑ったりもして。最後までずっと面白く読ませていただきました。
松井奏(以下、松井):率直に「とんでもない作品だな」と感じました。25人それぞれにバックグラウンドがあって、いろんな話があって…と、全員が主役のようなお話で。そして何よりみんなが狂っているんです。台本の時点で「どんな映像になっていくのだろう」と、すごく楽しみだったと同時に、赤﨑理人を演じるにあたっての緊張もありましたね。
LANDOER:台本は、ご自身が演じる役の視点から読まれましたか?それとも全体を把握するように?
松井:僕はお芝居がほとんど初めてということもあり、赤﨑視点で読み込んでいきました。
吉野:僕は『遺書、公開。』という作品そのものを読んでいる感覚で、全体を通して見えたメッセージを芝居に繋げることを意識して読んでいきました。展開を素直に楽しみながら、時折芝居をしているイメージをしたり、文字から「こんなシチュエーションで、こんな感じかな」と、シーンを想像したりもしていましたね。

緊張と高鳴りと―…
それぞれのクランクイン
LANDOER:クランクインの日の思い出はありますか?
吉野:確か、一発目の遺書公開だったよね?
松井:そうですね。割と順撮りで撮影していったので、遺書公開のシーンの撮影も僕が一発目で。とにかく右も左も分からないほど緊張していました(笑)。でも、いざ教室のセットに入ると「あ、少し薄暗いんだ」とか「ここで撮ったらどんなふうになるんだろう」と、すごくワクワクしたことを覚えています。
吉野:僕、どの作品でもそうなのですが、クランクインの前日は毎回眠れないんです。目をつぶってもセリフが勝手に出てきたり、セリフがないシーンの撮影でも、めちゃくちゃ考えてしまったり。なので、初日が終わった後はすごく疲れていることが多くて。特に今回の作品はキャストが多く、常に集中しておかないといけない緊張感もあって、初日は本当にどっときました。
LANDOER:たくさんの個性豊かなキャストの中、主演として意識されていたことはありましたか?
吉野:もちろん意識する部分はあったのですが、「主演として引っ張っていく!」というよりは、“フラットな関係性が築ける現場づくり”を意識していました。役柄的にも周りを引っ張っていくような役ではなかったので、みんなでフラットに話して、それぞれが気を遣わずにお芝居できたほうが良いんじゃないかと思って。役同様、同学年の学生のような気持ちで、みんなと接するようにしていました。

互いが語る
現場の空気を一気に変えた“赤﨑理人”
的確に芯を衝く、大きな存在感を魅せた“池永柊夜”
LANDOER:お互いの役の印象を教えてください。
吉野:赤﨑理人は人気があって、誰からも憧れられるような存在でありながら、裏の顔ももっている人で、僕は台本を読んでいるときから「赤﨑役の役者さん、大変そうだな」と思っていたんです。今回松井くんが赤﨑を演じることを知って、さらには、本作が彼にとって初めての映像作品だということを聞いて、少し心配していたのですが、そんな心配は不要でした。トップバッターの赤﨑の遺書公開シーンのお芝居で、現場の空気を一気に変えたのを見て「あぁ、スターだな」と(笑)。
松井:あはは(笑)。北人くんが演じた池永柊夜は、あまり感情を表に出すタイプの人ではなかったのですが、ワーッと芝居をしているわけじゃないのに、ちゃんと伝わってくる感情があって、その表現は自分にはできないと感じていました。声を荒げるでもないし、別に怒鳴っているわけでもないのに、芯を衝くようなところには、ズシッとくるものがあって。池永の存在感の大きさは北人くんだからこそ表現できていたのだと思います。池永を完ぺきに演じきった北人くんはすごいです。

自分自身とイメージ、
「ありのまま」も「別物として色付ける」も
どちらも尊い“自分らしさ”
LANDOER:各々が〈序列〉というイメージで互いを認識していることが、後にいろいろな引き金となる本作ですが、他人事ではなく、私たちも無意識のうちに「人をイメージで認識している」と気づかされる作品でもありました。職業柄、イメージがつきやすいお二人は、ご自身とイメージとのバランスをどう意識されていますか?
松井:僕は普段の自分と仕事上の自分、どちらも特に変わらないので、楽しくやらせていただいています。基本的にどこでもこんな感じでいるので(笑)。自分自身とイメージの間にギャップを感じたことはないかもしれないです。
吉野:僕は意外と(自分自身とイメージは)別物かも。僕が所属しているTHE RAMPAGEには「HIPHOPテイスト」というコンセプトがありますし、メンバーも16人いるので、チームのコンセプトや楽曲の世界観に極力寄せているように思います。そこに自分のカラーを入れて、さらに色付けていくような感覚ですね。

日に日に増していく緊張感のなか、
25名のキャストを束ねた、監督の現場づくり
LANDOER:ここまでお話を伺ってきて、作中のお二人と違って、とても和気あいあいとされていてほっこりしています。作中では全員がピリピリしていた本作ですが、カメラが回っていないときの現場はどんな雰囲気でしたか?
吉野:すごく緊張感のある現場でした。序盤のほうは初めましての方も多かったので、なるべくコミュニケーションをとりながら臨んでいたのですが、後半になるにつれて、シリアスなシーンや遺書を公開する感情的なシーンの撮影が続くようになってくると、重たい雰囲気の日も増えていきました。
LANDOER:遺書の公開が続くシーンは、かなりエネルギーが必要だろうなと感じました。
吉野:英(英勉)監督がみんなと上手にコミュニケーションをとって、非常にやりやすい現場づくりをしてくださっていたので助かりました。締めるところは締めて、緊張感をもたせてくださったおかげでやり切れた部分は大きいと思います。
松井:そうですね。スタジオでは毎日誰かが遺書を公開していたので、ピリッとした雰囲気になることが多かったのですが、スタジオの外のお茶場では、北人くんが差し入れしてくれたコーヒーをみんなで飲んだり、楽しく話したりと、コミュニケーションをとっていた印象があります。

アーティスト同士だからこそ共鳴できた
あの日の「大丈夫?」が、絆のキッカケに
LANDOER:お茶場ではお二人でどんなお話を?
松井:ちょうどこの作品の撮影期間中にグループのライブがあったのですが、ライブ翌日に赤﨑を演じるというギャップに、少しやられてしまった日がありまして…。そのときに北人くんが「大丈夫?」と声をかけてくれたんです。「そうなっちゃうときもあるよね」と共感してくれて、それをキッカケにさらに話すようになったのを覚えています。
吉野:もうあからさますぎて心配で(笑)。椅子に一人で座って宙を仰いでいたので「大丈夫か」って。確か、前日のライブをドームでやっていたんだよね?
松井:そうそう。
吉野:大きい会場のステージに立って、キラキラとした世界でライブをやった次の日のこの現場は、「確かにメンタル的に無理をするよな」というのが、僕はすぐに分かったので。そういった思いを二人で話して、二人で乗り切った部分もありました。
松井:「ちょっと外に散歩に行こう」と連れ出してくれたりして。すごく感謝しています。

知れば知るほど“人間らしい”
愛おしさが詰まった、お互いの印象のハナシ
LANDOER:緊張や揺らぎも共に乗り越えてきた仲間、という雰囲気がお二人から伝わってきます。現場を経て、お互いの印象は変わりましたか?
松井:北人くんにお会いするまでは、本当にイケメンで、完全なスターで、少しとっつきにくい部分のある方なのかな…なんて思っていたのですが、初日からフランクに話しかけてくれて、想像していた顔と今回の現場で知った顔に、とても素敵なギャップを感じました。完ぺきな人かと思いきや、すごく可愛らしくてほんわかしていますし、ちょっとボケたりふざけたりもするんです。僕が落ち込んでいるときには、そっと見つけて声をかけてくれたりと、あたたかい気遣いもできる方で。すごく素敵な方です。
LANDOER:可愛らしいけれど、頼りがいもあるんですね。
松井:そう、本当に可愛いんです(笑)。
吉野:(照れ笑い)僕は最初に会ったときの印象は「身長大きいな~」でした。
松井:薄いな~(笑)。
吉野:最初に会ったときからすごくキラキラしていて、アイドル性を感じた一方で、初めてのお芝居を前に「実はすごく緊張しているんだろうな」とか、「不安もあるだろうな」とも思っていて。でも、そんなことを感じさせないほど本番に強くて「すごい」と驚きました。それもあって、メンタルが強い子なのだと思っていたのですが、本当はすごく頑張っていたんだよね。
松井:はい(笑)。
吉野:知れば知るほど内気な部分があったり、葛藤したりもしていたみたいで。撮影の後にその話を聞いてはじめて、彼のそういった部分を知ったんです。今振り返ると、撮影当時はめちゃくちゃ頑張っていたんだなと思います。


映画『遺書、公開。』
2025年1月31日(金)公開
出演:吉野北人 宮世琉弥 志田彩良
松井奏(IMP.) 髙石あかり
堀未央奈 忍成修吾 ほか
原作:陽 東太郎「遺書、公開。」
(ガンガンコミックJOKER/スクウェア・エニックス刊)
監督:英勉 脚本:鈴木おさむ 音楽:未知瑠
企画製作:HI-AX 製作プロダクション:ダブ
配給:松竹

Staff Credit
カメラマン:田中丸善治
ヘアメイク:大木利保 (CONTINUE)(吉野)/大森創太(IKEDAYA TOKYO)(松井)
スタイリスト:吉田ケイスケ(吉野)
インタビュー・記事:満斗りょう
ページデザイン:Mo.et