【磯村勇斗】映画『ビリーバーズ』未知の面白さの中で解放された〈信じる力〉の強大な魔力

磯村勇斗

映画『ビリーバーズ』
未知の面白さの中で解放された
〈信じる力〉の強大な魔力

私から見たアノ人が“変”であるように、アノ人から見た私はきっと“変”だ。生まれも育ちも、取り巻く環境も違うのだから、自分の常識に当てはまるはずがない。それでも人は「私だったら」と常識を主張し、当てはまらないものを批判し排除しようとする。でも、少し立ち止まってみて欲しい。そして「もしも自分がアノ人だったら」と〈想像〉してみて欲しい。例え理解はできなかったとしても、ほんの少しの〈想像力〉が誰かを受け入れるエッセンスになるかもしれない。そしてその〈想像力〉はきっと、魅力的な“変”へ誘ってくれる――そう、まさに孤島に生きる彼らのように。

映画『ビリーバーズ』

映画『ビリーバーズ』
© 山本直樹・小学館/「ビリーバーズ」製作委員会
7月8日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次公開

-Story-

とある孤島で生活をする二人の男と一人の女。

ニコニコ人生センターという宗教的な団体に所属している3人は、オペレーター、副議長、議長と互いに呼び合い、無人島での共同生活を送っていた。瞑想、昨晩見た夢の報告、テレパシーの実験、といったメールで送られてくる不可能な指令“孤島のプログラム”を実行し、時折届けられる僅かな食料でギリギリの生活を保つ日々。これらは俗世の汚れを浄化し“安住の地”へ出発するための修行なのだ。だが、そんな日々のほんの僅かなほころびから、3人は徐々に互いの本能と欲望を暴き出してゆき……。

-オペレーター-

ニコニコ人生センターに所属している青年。基本的には冷静であるが、僅かなほころびから自分の本能や欲望に踊らされてゆく。

磯村勇斗

『ビリーバーズ』 × 磯村勇斗

今回「『ビリーバーズ』をやりませんか?」というお話をいただいた後に、原作を読ませていただいたのですが「これをどうやって実写化するのだろう?」という未知への面白さを感じたのを覚えています。その時はまだ、オペレーター役なのか議長役なのかも決まっておらず、出演するかどうかといった段階のお話だったんです。この作品の一部として生きている自分を想像した時に、俳優・磯村勇斗にも、僕という一人の人間にも「何か面白いことが起きそうだな」と思って出演を決めました。その後、オペレーターと議長役、どちらに興味があるかを聞いていただきオペレーターを演じることが決まりました。

オペレーター × 磯村勇斗

オペレーターはもちろん、『ニコニコ人生センター』を素直に信仰している議長さんも副議長さんも、すごくピュアな人たち。ただ他の2人に比べて、オペレーターは俯瞰的な視点を持った冷静な人物でもあって。だからこそ、いろいろな要素を考えた上での判断ができるのだと思いながら演じていました。強い信仰心を持っていながらも、実は一番現実的なのが彼なんです。

磯村勇斗

そんなピュアな3人が生活する孤島ですが、
大自然の中での撮影はいかがでしたか?

あれだけの自然がずっと続く撮影現場は初めてでした。僕自身は自然が大好きな人なので、普段の都会生活を抜け出して2週間ほど自然に触れられる機会があったのは嬉しかったです。夏の撮影だったこともあり、虫がたくさんいたのですが、それすらも徐々に気にならなくなっていって。その解放感も心地好かったですね。他の皆さんも虫の一匹や二匹、どうでもよくなっていました(笑)。

まさに自然との共存ですね(笑)。
磯村さんご自身は、3人の“純粋な信仰心”について
どう噛み砕かれていましたか?

この3人に限らず、僕たち人間は何かを〈信じる〉といったことに関して、すごく長けている生物だと思うんです。〈信じる〉エネルギーをとても強く持っていて、その対象が人によって誰かだったり、物だったり、それこそ宗教だったりする。今回オペレーターを演じる上では、自分の中にある、そういった“何かを〈信じる力〉”を『ニコニコ人生センター』に当てて、“信仰心”を噛み砕いていくようにしていました。

磯村勇斗

磯村勇斗

数々の役を演じられている磯村さんですが、
今回の〈信じる力〉のように、
他の役でもご自身の中にある要素を

共鳴させながら役を築かれていくのですか?

役と僕は違う考えや感情を持っているので、自分の中の共鳴できるポイントを探すというよりは、その役の心情や肉体的なものを僕の方から知ろうとしていく、といった場合が多いかもしれないです。例えば今回であれば「過酷な孤島で過ごしているのだから痩せているはずだ、だったら自分も体重を落としてみよう」と考えて、役にアプローチをしていました。そうした先で、何かオペレーターと同じ景色が見えてくるかもしれないですし、それが役を演じる上での自信になっていくんじゃないかと思っているんです。

役に歩み寄る作業ですね。
今回、オペレーターに歩み寄ってみて
見えてきたものはありましたか?

何か明確に「これが見えた!」と、ピンときたわけではないのですが、『ビリーバーズ』に向けて入信していく、オペレーターに歩み寄っていく過程で「これでオペレーターはいけるぞ!」という妙な自信が出てきたのを覚えています。「この役をやっていくんだ」と、自分を信じ込ませることができたといいますか。自己満足の世界の話なのですが、実際に減量してオペレーターに近づいた自分の姿を見た時に自信が湧いてきたんです。僕にとっての役作りは“どれだけ自分が納得して自信を持って現場に行けるのか”なので、そういった意味で、オペレーターという役柄にしっかりと歩み寄れたと思っています。

磯村勇斗

Dear LANDOER読者
About映画『ビリーバーズ』

傍から見たら『ニコニコ人生センター』って変な集団ですし、『ビリーバーズ』は変わった映画だと思うのですが、実は僕らと何ら変わらない人たちの映画なんです。僕ら人間は何かを〈信じる力〉もあれば、欲望によって崩れる瞬間もある生き物。それこそが人間の本来の姿だと僕は思っていて。きっと3人の姿は、自分自身の人間性を改めて見つめるキッカケになると思いますし、プラスにもマイナスにも働く〈信じる力〉の“魔力性”を感じていただける作品になっていると思います。そして、僕らが彼らを見て“変”だと思うのと同様に、彼らからしたら僕らが“変”であることを忘れないでほしいな、と思いますね。

確かに、相手に対する〈想像力〉の問題ですね。

そう、主観的な考えから戦争が起きたり、差別が生まれたりすると僕は思っていて。だからこそ、この作品を今のタイミングで公開できることをとてもありがたく思っています。作品から感じられる“主観”だけではない物の見方も含めて、世の中の皆さんに関心を持っていただけたら嬉しいです。

磯村勇斗

磯村勇斗(29)

いそむら はやと

1992年9月11日生まれ。
多彩な表情で満ちた花束から、
一輪の〈役〉を差し出して受取手の感情を波立たせるDOER

映画『ビリーバーズ』
2022年7月8日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次公開

出演:磯村勇斗 北村優衣 宇野祥平
   毎熊克哉 山本直樹
原作:山本直樹(「ビリーバーズ」小学館「ビッグスピリッツコミックス」刊)
監督・脚本:城定秀夫

詳細は公式HPをチェック

映画『ビリーバーズ』
© 山本直樹・小学館/「ビリーバーズ」製作委員会
7月8日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次公開

Item Credit
ジャケット:COGNOMEN ¥42,000
パンツ: ¥32,000(共にサカスPR ︎03・6447・2762)
シャツ:DISCOVERED ¥28,600(ディスカバード ︎03・3463・3082)
タンクトップ:FORSOMEONE ¥9,900(エドストローム オフィス ︎03・6427・5901)
ネックレス:MARCO ARVISO ¥24,750(ネペンテス ︎03・3400・7227)
リング:IVXLCDMのリング ¥44,000、ブレスレット ¥25,850
(共にアイブイエックスエルシーディーエム六本木︎03・6455・5965)
靴はスタイリスト私物

Staff Credit
カメラマン:田中丸善治
ヘアメイク:佐藤友勝 
スタイリスト:齋藤良介
インタビュー・記事:満斗りょう
ページデザイン:吉田彩華