映画『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』
「逃げずに立ち向かう人でありたい」
凛々しく立ち上がる一国の王女と、
表現者として戦い続ける彼女が共鳴した
〝はじまりの〈中つ国〉の物語〟
2001年に映画化され、今もなお根強い人気を誇る『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ。種族を越えた〈絆〉、生命に刻み込まれた〈欲望〉の種、その種に打ち勝とうとする〈強さ〉。ファンタジーでありながら、生きるとは何たるか、共にあるとは何たるかが、3つの物語を通して細やかに紡がれてきた。そんな3部作の200年前の物語の主人公・ヘラ。彼女は迫りくる決断と戦いに立ち向かい、ローハンの国を救えるのか――。本作の戦いから200年後、魔法使いガンダルフは「今、自分が何をすべきか考えろ」と言葉を唱えた。今を変えられるのは、指輪でも、魔法でもなく〝自分自身〟。来たる2025年、新たな冒険へと足を進めるあなたに、この物語が届くことを願って。
映画『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』
-introduction-
J.R.R.トールキンの傑作原作を基に、ピーター・ジャクソン(監督/共同脚本)によって映画史にその名を刻んだファンタジー超大作『ロード・オブ・ザ・リング』3部作。〈一つの指輪〉をめぐる壮大な冒険を描く物語には、200年前に遡る伝説の戦いがあった。原作「指輪物語 追補編」に記された、騎士の国ローハン最強のヘルム王についての記述をふくらませ、そのエピソードを映画化すべく、3部作を監督したピーター・ジャクソンが製作総指揮として立ち上がる!監督の座を託されたのは、『東のエデン』『攻殻機動隊S .A.C』などで日本アニメーションの第一人者として讃えられる、神山健治。この冬、〈中つ国〉の未来を決める伝説の戦いを見届けて初めて、『ロード・オブ・ザ・リング』は完結する—。
-あらすじ-
偉大な王ヘルムに護られ、人間の国ローハンの人々は平和に暮らしていた。だが、突然の攻撃を受け、美しい国が崩壊してゆく…。王国滅亡の危機に立ち向かう、ヘルム王の娘である若き王女ヘラ。最大の敵となるのは、かつてヘラと共に育ち、彼女に想いを寄せていた幼馴染のウルフだった。大鷲が空を舞い、ムマキルは暴走、オークが現れ、金色の指輪を集める“何者”かが暗躍し、白のサルマンが登場…。果たしてヘラは、誇り高き騎士の国を救えるのか—?
-ヘラ-
ヘルム王の娘。2人の兄と共に勇猛な王に育てられ、歩くよりも先に馬に乗ることを覚えた。
自由を愛し、探究心にあふれ、知性と力強さを持つ。
『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』
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小芝風花
最初にお話をいただいた時は、「嬉しい!やった!」という喜びでいっぱいだったのですが、これまでアニメーションの声優をしたことがなかったので、次第に「『ロード・オブ・ザ・リング』という世界的人気作の声優を、アニメーション初挑戦の私が引き受けて良かったのだろうか…」と、プレッシャーが大きくなっていったのを覚えています。
世界中で愛されている
『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズゆえの
重圧もありますよね。
映画3部作もご覧になられたと思いますが、
いかがでしたか?
20年近く前とは思えない迫力のある映像と、壮大な世界観に引き込まれたと同時に、「人の欲望って恐ろしいな」と感じました。美しいエルフが、指輪の能力を前にすると恐ろしい形相になってしまうように、“欲望の醜さ”がビジュアルで表現されていて。もしも強大な力を得てしまったら、平和を願っていた人にさえ「支配したい」「人の上に立ちたい」という欲望が生まれてしまうのだと思うと、とても怖くなりました。この作品に描かれている“欲望の醜さ”は、ファンタジーでありながらもすごくリアルだな、と。
『ロード・オブ・ザ・リング』
3部作の世界観はそのままに、
本作ではその前日譚が
長編アニメーションとなって描かれます。
本作はどのような物語になっていますか?
本作は『ロード・オブ・ザ・リング』3部作から200年ほど前のお話で、指輪をめぐって争うのではなく、私が演じる王女ヘラが国を守るために戦う物語になっています。と同時に、最初は一人の少女として、馬に乗ったり剣を振り回したりと活発に育っていたヘラが、「自分が民を守らなければならない」と自覚して、王女として強くなっていく成長物語でもあって。彼女の想いや成長を通して、「独りよがりな欲望よりも、皆を想う気持ちこそが人を強くさせる」というメッセージが伝わる作品になっていると思います。
一国の王女として凛と成長していくヘラは、
小芝さんの目にはどのような人物に映りましたか?
強くて芯のある女性だと思いました。限られた時間でたくさんの判断を迫られながらも、「自分はこうしたい」「こうしなければならない」という自覚をもって決断を実行に移し、その場の状況や敵と対峙できる強さは、そうそうもてないもの。現代でこそ女性の活躍の場が広がっていますが、本作の舞台のように「女性はおとなしく」という暗黙のルールが存在していた時代の中で、第一線に立ち、敵に挑んでいく彼女のたくましさは、とてもかっこよく映りました。
芝居の世界で、
第一線で活躍する小芝さんもかっこいいです。
ご自身と似ているなと感じる部分はありましたか?
一国の王女と私とでは背負っているものが違いすぎるので、「ここが似ているな」とは考えもしなかったのですが、最近は年齢を重ねるにつれて、お仕事への責任感や後輩の数も増えてきて、「自分がしっかりしなきゃいけない」と自覚する場面が多くなったように思います。ヘラの背負っているものとは比にならないけれど、「この人についていきたい」と思える、ヘラのように強くて安心感のある女性は私の憧れです。
時代や立場、世界が違えど、
人として共感できる場面がたくさんありました。
強くてかっこいいヘラも、やはり一人の少女として弱さを抱えていて、「私じゃ無理かもしれない」という、怖さや不安を乗り越えながら成長している――その姿を見ると、最初から何でもできる人はいなくて、自分の弱さを乗り越えた先に〈強さ〉が芽生えるのだと感じますし、だからこそ「逃げるのではなく、立ち向かえる人になりたい」と思えます。私もアニメの声優に初挑戦させていただくことになり、正直「怖い!逃げたい!」と、不安な気持ちがあったのですが、監督に助けていただきながら順調にアフレコを終えて、「やってよかった!」と思うことができました。ヘラとの出逢いで、私自身、壁を一つ乗り越えられたような気がします。
「不安もあった」という、
長編アニメーション映画の吹き替え。
どのように挑まれましたか?
夏頃に予告編のアフレコをしたのですが、最初はアニメーションから自分の声が出てくることに、とても違和感があって…。なんだか自分の声だけアニメの人物になりきれず、人間のままのような気がしてしまったんです。その不安を監督にも相談させていただき、「ビシバシご指導をお願いします」とお伝えして、本編に挑みました。
予告編のアフレコと本編のアフレコは
少し時間が空いたとお伺いしたのですが、
本編に挑むまでに、
どのような準備をされたのでしょうか?
本編の台本が届いてから収録まで、3、4日間というわずかな時間しかなかったので、台本や予告編を見ながら「ヘラの声はこんな感じかな?」と、とにかく自主練を重ねました。そして本編のアフレコの日。緊張している私を、監督が「大丈夫だよ」とあたたかく迎え入れてくださったおかげで、リラックスした状態で挑むことができました。自分では良し悪しの手応えがまったく分からなかったので、監督やスタッフさんの「大丈夫だよ」という言葉を信じながらヘラを築いていきました。
ヘラの幼馴染でありながら
敵として立ちはだかる『ウルフ』を演じた
声優の津田健次郎さんとは、
実写映画の吹き替えでもご共演されていましたが、
前回から引き続きのご共演にあたり、
参考にされたことはありましたか?
前回の共演で、自らの感情をのせつつも、役として統一された声をキープし続けられている津田さん対し、身体を動かすお芝居に慣れている私は、感情的に演じようとすればするほどキャラクターの声がブレていってしまうことに気づいたので、今回は、津田さんからいただいた学びを活かして「感情をのせつつも、そのキャラクターがもつ声の範囲から飛び出さないこと」を、とても意識しました。
アニメーションの声優をご経験されて、
普段アニメを観る時にも
視点が変わったのではないでしょうか?
そうですね。何気なくアニメを観る時にも、「アニメーション上の表情の変化はわずかだけれど、声は感情豊かだな」と、画と声を別々に観るようになりました。というのも、今回ヘラを演じることになり、番組で共演させていただいている声優の宮野真守さんに相談をしたところ、「アニメーションの表情に捉われず、普段お芝居している時よりも思った以上に大袈裟に演じていいと思うよ」というアドバイスをいただいたんです。それを聞いて「ヘラはキリッとした表情が多いけれど、画に引っ張られすぎず、感情を豊かに出せるよう頑張ろう」という意気込みが生まれて。他のアニメ作品を観る時にも、意識的に画と声の表情を分けて観ているうちに、今までにはなかった新しい視点が加わっていることに気づきました。
「声に表情を加える」という経験は、
普段のお芝居にも活かせそうですか?
普段やっていたお芝居が声のお芝居に活きてきたように、今回の声のお芝居が、今後のお芝居の幅をより広げてくれるかもしれないと思っています。「いろいろなお芝居の仕事をしたい」という想いがずっとあったので、ドラマや舞台でのお芝居に加えて、声のお芝居ができたことは、役者人生においてとてもプラスになりました。本作で初めてアニメーションの声優をやらせていただきましたが、「この先もっと声の仕事を広げていけたらいいな」という夢も広がりました。
小芝さんのお芝居に対する前向きな探究心が、
幅の広い演技に繋がっているのだと感じます。
もともと人前に出るのがあまり得意なタイプではなく、このお仕事を始めて、お芝居を好きになれたおかげで、次第に人前に出られるようになっていったんです。お芝居の世界にはゴールがない分、どんどん自分を奮い立たせて頑張らなければならない怖さや難しさがあるのですが、挑戦の後には「やって良かったな」「勉強になったな」と、いつも達成感を覚えていて。反省を活かして成長に繋げながら進んでいけることに嬉しさを感じますし、その嬉しさがこの仕事の楽しさでもあると思っています。
Dear LANDOER読者
『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』
From 小芝風花
指輪をめぐる物語とはまた違った戦いの物語ですが、200年後の『ロード・オブ・ザ・リング』3部作の物語と繋がっているお話なので、シリーズファンの方には是非観ていただきたいと思いますし、今まで『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズを観たことのない方にも届いて欲しいと思っています。この映画を機にシリーズ3部作も観ていただいて、『ロード・オブ・ザ・リング』の世界観をより楽しんでいただけたら嬉しいな、と。加えて、圧巻のアニメーション技術にも注目していただきたいです。戦のシーンなどの迫力のある場面はもちろん、一羽の大鷲の羽ばたき方からヘラの目の動きまで、ちょっとした動きでここまで心情を表現できるのだと、私自身、本作を観て何度も驚かされました。皆さんにも是非、この感動を映画館の大きなスクリーンで体感していただきたいと思います。一人の女性としてのヘラの成長や親子愛、兄妹愛なども描かれていて、グッとくる物語になっていますので、冬休みに入るこの時期、劇場に足を運んで観てください。
映画『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』
2024年12月27日(金)全国公開
ワーナー・ブラザース映画
監督:神山健治(『東のエデン』『攻殻機動隊S.A.C』「精霊の守り人」)
製作:フィリッパ・ボウエン、
ジェイソン・デマルコ、
ジョセフ・チョウ
製作総指揮:フラン・ウォルシュ、
ピーター・ジャクソン、
サム・レジスター、
キャロリン・ブラックウッド、
トビー・エメリッヒ
脚本:ジェフリー・アディス&
ウィル・マシューズ、
フィービー・ギッティンズ&
アーティ・パパゲオルジョウ
ストーリー:アディス&マシューズ、
フィリッパ・ボウエン
キャラクター原案:J.R.R.トールキン
日本語吹替版キャスト:市村正親、小芝風花、
津田健次郎 ほか
Item Credit
衣装協力
・SHIROMA
・ete
・Jouete
Staff Credit
カメラマン:堀内彩香
ヘアメイク:石川ユウキ
スタイリスト:成田佳代
インタビュー:満斗りょう
インタビュー・記事:満斗りょう、鈴
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