【桜田通】映画『大名倒産』ユニークな現場で発見した共に[役]を組み立てることへの興味

桜田通

映画『大名倒産』
ユニークな現場で発見した
共に[役]を組み立てることへの興味

心臓がドクドク鳴るような大ピンチ!自分の人生にそんなピンチが訪れたとき「そばにいてほしい」と思うほど、最高にパワフルなキャラクターたちであふれた映画、『大名倒産』。悲しくてうつむいたことも、嫌になって諦めたことも、全部まるっと味方にしてしまえばいい。うつむいたから見つける花があるかもしれない、諦めたから生まれる案があるかもしれない、そうして前を向いた先でたどり着く場所が、きっと自分だけの大正解。いつだって思考することを止めない彼らと一緒にいれば、明日はきっといい天気。どんなピンチにだって、チャンスの可能性が潜んでいることを忘れないで――!

映画『大名倒産』

映画『大名倒産』
© 2023 映画『大名倒産』製作委員会

-Story-

プリンス、絶体絶命のピンチから奇跡の大逆転なるか!?

越後・丹生山(にぶやま)藩の鮭売り・小四郎はある日突然、父から衝撃の事実を告げられる。なんと自分は、〈松平〉小四郎― 徳川家康の血を引く、大名の跡継ぎだと!庶民から一国の殿様へと、華麗なる転身…と思ったのもつかの間、実は借金100億円を抱えるワケありビンボー藩だった!?先代藩主・一狐斎は藩を救う策として「大名倒産」つまり藩の計画倒産を小四郎に命じるが、実は全ての責任を押し付け、小四郎を切腹させようとしていた…!残された道は、100億返済か切腹のみ!小四郎は幼馴染のさよや、兄の新次郎・喜三郎、家臣の平八郎らと共に節約プロジェクトを始めるが、江戸幕府に倒産を疑われ大ピンチ!果たして小四郎は100億を完済し、自らの命と、藩を救うことが出来るのか!?

-松平喜三郎-

小四郎の兄。病弱だが聡明な松平家三男。

桜田通

映画『大名倒産』 × 桜田通

今回、この映画への出演を決めた理由のすべてに、主演・神木隆之介という存在が関わってきます。作品自体が本当に素晴らしいことは大前提。ただ僕にとっては、この作品に神木さんがいないということは考えられなかったんです。神木さんとは、もともとプライベートで仲良くさせていただいているのですが、実はガッツリとお芝居で共演したことがなく。『大名倒産』のお話をうかがって、すぐに「一緒に出たい!」という強い気持ちが生まれたのを覚えています。

実際に神木さんの座長姿を現場で見られて、
受けられた印象や刺激はありましたか?

友達として過ごしてきた時間がとても長かったので、僕のなかには、普段の面白くてユーモアに富んでいる“少年”のような彼の姿しかイメージがなかったんです。加えて、今回神木さんが演じられた小四郎は、僕からすると普段の神木さん自身とそこまで差がないように感じていて。ただ、実際に現場でお芝居をされている瞬間を拝見したら、しっかりと『小四郎』という存在としてそこにいらしたんです。もう正直、いまの僕では計ることのできない部分があるな、と。異次元な神木さんを間近で感じられとてもいい経験になりましたし、刺激的でもありました。

桜田通

仲が良いからこそ完成したシーンもありそうですね。

そうですね。今回僕が演じた喜三郎は、弟である小四郎を尊敬している役どころなのですが、その喜三郎の想いと、僕が普段神木さんに対して抱いている尊敬や、「可愛らしいな」と感じている部分が共鳴していたこともあり、僕らがいままで友達として築いてきた関係性を作品に活かすことができたんじゃないかな、と思います。とあるシーンで喜三郎が小四郎を励ます場面があるのですが、そのシーンの撮影時も、本番前に今まで築き上げた神木さんとの関係性を心の中であたためながら撮影に臨みました。

松平喜三郎 × 桜田通
歌を詠むように言葉を放つ喜三郎は、
どのようにして完成したのですか?

最初に台本を読んだとき、歌のように詠むのか、普通に流れるように詠むのか決まっておらず、衣装合わせで前田(前田哲)監督とお話しして、歌を詠むように話すことになったんです。現場で監督が色づけをしてくださったおかげで、喜三郎のキャラクターがかなり底上げされたと思っています。僕もあそこまで喜三郎が強いキャラクターになるとは思っていなかったですもん(笑)!

確かにチャーミングなキャラクターですよね(笑)。
作中に笑顔を添えてくれる存在といいますか。

お恥ずかしい話、台本を読んだだけではそこまでの喜三郎を構築できなかったので、今回の現場では監督の力をとても感じさせていただきました。監督によって、演出をつけるかつけないかの度合いが違うのですが、喜三郎に関しては「監督にしっかりと味つけをしていただいた役」という感覚があって。そういった感覚のなかでお芝居をする現場が久々だったので、すごく新鮮で楽しかったです。とはいえ正直、映像を観るまでは自分のなかに「大丈夫かな…」という不安があったのですが、いざ完成作を観てみたら、個性豊かな面々のなかで喜三郎の魅力がきちんと成立していて。その瞬間、心から「監督についていってよかった!」と思うことができました。

とても個性的な喜三郎の歌声の
誕生秘話を教えてください。

喜三郎の歌声は、監督直々のご指導のもとでできあがったものです。監督が実際に現場で見せてくれた詠み方を、僕が身体に落とし込んで喜三郎のセリフを発していました。まるでボイトレのような雰囲気だったので、松平兄弟の次男・新次郎役の松山ケンイチさんが「やっぱり監督すごいな」と笑われていて(笑)。撮影本番前、カメラのセッティングや照明部さんの準備中などの時間を使って、大きな声で歌を詠む監督のあとをひたすらついて詠んでいく、という作業をしていたのを覚えています。神木さんはそれを見ながら「頑張れ!」と、思ってくれていたみたいです(笑)。

桜田通

ユニークだけれどストイックな現場の空気が
伝わってきます(笑)。
今回の現場で「こんな自分がいたんだ」という、
新たな発見もあったり?

自分のなかに、今回のように“監督やプロデューサーの方と一緒に[役]を組み立ててゆく、現場への興味”があることを発見しました。もちろん、スタンダードに自由に演じられる作品も好きなのですが、作品の世界をいちばんに思い描いている監督やプロデューサーの方と、その世界に入るために一緒に役を組み立てていくことが楽しかったんです。現場を見ている方々からすると、大変そうに思われることかもしれないけれど、僕自身はそれがまったく苦ではなくて。これから先、もっとこういった現場を踏んでいきたいと思いました。

前田監督といえば
“衣装”や“小道具”へのこだわりもピカイチですが、

今回の喜三郎の衣装イメージは、
どのようにしてできたものですか?

喜三郎は病弱なキャラクターなので、病ハチマキをつけることが第一でした。あとはやはり、病に臥せている設定なので、監督からは「無理のない程度に痩せてほしい」とのオーダーがあったのを覚えています。喜三郎自身はずっと寝床にいるので、基本的に強い色味ではない衣装が多かったのですが、ほかのキャラクターの衣装の色味などには細かくこだわられていた印象です。そのおかげか、色味が強い小四郎や新次郎と比較的シンプルな喜三郎の三兄弟が並んでいても、どこかしっくりくるんですよね。きっと監督のなかに〈正解〉があって、そのイメージに対して衣装さんが対応されていたんだろうな、と。ビジュアルも含めて、こだわりや世界観がしっかりとおありになる方なのだと思いました。

桜田通

前田監督と撮影期間をともにして、
桜田さんの目には
監督がどのように映っていましたか?

監督はすごく変わった人だな、と思っていました(笑)。ただ、その“変”が僕にとってはめちゃくちゃ魅力的で。監督って繊細なこだわりが強い一方で、どこかサバサバもされているんです。感じている世界をすべて言葉にするわけではないからこそ、いつも監督にしか見えていない〈正解〉をもたれている。その世界観の構築の仕方に、僕はすごく魅力を感じました。前田監督の生み出されるオリジナリティが大好きで、それが完成した作品、物語のすべてに溢れているところが「さすがだな」と思いましたし、魅力的な監督と出会うことができて嬉しかったです。

Dear LANDOER読者
From 桜田通
映画『大名倒産』

笑顔になるようなおふざけのシーンも多いなかに、あたたかさや社会風刺をしている要素も混ざっていて、僕自身とても好きな作品になりました。出演作という忖度なしに『大名倒産』は本当に面白かったので、是非、皆さんにも届いてくれたらいいな、と思います。

桜田通

桜田通(31)

さくらだ どおり

1991年12月7日生まれ。
花弁ごとに違う表情を宿す〈桜〉のような難解さと、
爛漫とした愛らしさが同居するDOER

【Profile】
2005 年のドラマ「瑠璃の島」にて映像デビュー。
ミュージカル版「テニスの王子様」(06 ~ 07) の主人公・越前リョーマ役に抜擢 されて以降、様々な話題作に出演。
最近では、Netflix「今際の国のアリス」シリーズや現在テレビ東京で放送中のドラマ「クールドジ男子」に出演。
さらに5月12日にはデビューシングル「MIRAI」で全世界デビューも果たし、アーティストとしても活躍している。

映画『大名倒産』
2023年6月23日(金)全国ロードショー

出演:神木隆之介 杉咲花 松山ケンイチ
   小日向文世 / 小手伸也 桜田通 / 宮﨑あおい
   キムラ緑子 梶原善 / 勝村政信 石橋蓮司
   髙田信彦 藤間爽子 カトウシンスケ 秋谷郁甫 ヒコロヒー
   浅野忠信 / 佐藤浩市 原作:浅田次郎「大名倒産」(文春文庫刊)
監督:前田哲 
脚本:丑尾健太郎 稲葉一広
音楽:大友良英

映画『大名倒産』
© 2023 映画『大名倒産』製作委員会

Staff Credit
カメラマン:田中丸善治
ヘアメイク: 和田しづか
スタイリスト: 柴田圭(辻事務所)
インタビュー・記事:満斗りょう
ページデザイン:古里さおり