【山本千尋】映画『キングダム2 遥かなる大地へ』大河ドラマ『鎌倉殿の13人』争乱の世で、〝命の炎〟を滾らせる2人の女性の物語

山本千尋

映画『キングダム2 遥かなる大地へ』
大河ドラマ『鎌倉殿の13人』
争乱の世で、〝命の炎〟を滾らせる
2人の女性の物語

いつの時代も“大切な誰かを守るため”に闘ってきた私たち。その為に生まれた〈武〉の道に宿るのは、歴史と共に「生きろ」と命を繋いできた様々な先駆者たちの〈信念〉。そんな〈信念〉を伝え続けるために、「武術の未来を照らしたい」と立ち上がった山本さんの真っ直ぐな瞳には、たくさんの人たちの〈愛〉が灯っているように見えました。外の世界への憧れを抱きながら、妹を守るために生きた『キングダム』の羌象、自身の生きる道を繋ごうと泥臭く前を見据える『鎌倉殿の13人』のトウ。争乱の世に翻弄される女性に身を投じる彼女に、胸の熱くなるようなお話をお聞きしてまいりました。

映画『キングダム2 遥かなる大地へ』

映画『キングダム2 遥かなる大地へ』
©原泰久/集英社 
©2022映画「キングダム」製作委員会  

-Introduction-

時は紀元前、中国春秋戦国時代を舞台に、天下の大将軍になるという夢を抱く戦災孤児の少年・信(しん)と、中華統一を目指す若き王・嬴政(えいせい)(後の秦の始皇帝)を壮大なスケールで描く漫画「キングダム」(原泰久/集英社)。 累計発行部数9000万部超(2022年現在)の大ヒットを記録している原作だが、その壮大なスケールから実写化不可能と言われていた。しかし、2019年に映画『キングダム』が封切られると、邦画史上最大級のスケールで描かれた本格エンターテインメント超大作として多くのファンの支持を獲得して、興行収入57.3億円を突破。その年の邦画実写作品で見事No.1に輝き、数々の映画賞にも選出されるなど映画界に大きなインパクトを与えた。 続編を望むファンの熱意に後押しされ、プロジェクトを再始動するが、その矢先に、新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるう。当初の制作体制から大きな変更を余儀なくされ、かつてない環境に置かれた制作スタッフやキャスト陣。それでも続編にただならぬ思いを募らせており、その火は決して絶えることはなかった。撮影は厳戒態勢の中、2020年6月から段階的に日本各地や中国などにて行われ、ついに2021年10月にクランクアップ。 前作から3年の時を経て、更なるスケールへとパワーアップを果たし、映画『キングダム2 遥かなる大地へ』としてスクリーンに帰ってくる!!

-羌象(きょうしょう)-

伝説の刺客一族蚩尤族[巫舞という呼吸術で闘う民族]の女性。使う得物は白鳳。主人公・信(山﨑賢人)と伍(歩兵の五人組)を組むこととなる羌瘣(きょうかい·清野菜名)の幼馴染みで、彼女とは姉妹同然に育ち、大変慕われていた。以前から外の世界を見たいと羌瘣に語っていたが、継承者を決める一族間の決闘「祭」の日に悲劇が起こる。以降は羌瘣は羌象の仇討ちのための旅に出る。

山本千尋

羌象 × 山本千尋

撮影前に羌瘣役の清野さん(清野菜名)にお会いできるスケジュールがなかったので、ご無理を言って、清野さんがアクション稽古をされている場所にお邪魔させていただいたんです。実際に清野さんにお会いしてみて、清野さんが纏われている人懐っこくて愛嬌たっぷりな雰囲気に、羌象の気持ちと同様、妹のような愛着がグッと湧いたのを覚えています。「羌瘣を守りたい」そんな想いが芽生えた瞬間でもありました。親のいない羌象と羌瘣、2人が支え合って生きてきた背景を思いながら「どれだけ2人の絆に寄り添っていけるかな」と、意識しながら撮影に臨ませていただきました。

羌象は「羌瘣を守りたい」という想いと、
「外の世界に出たい」という

自分の夢の狭間に常に立っていたと感じました。
山本さんは、彼女のその揺らぎを
どのように考えていましたか?

私の中では、妹のような存在である羌瘣への想いが7割、自分のことが3割ぐらいなのかな、と考えていました。「外の世界に出たい」という自分の目標があったとしても、内心本当は「羌瘣にも(外の世界を)見せてあげたい」と思っていたんじゃないかと思うんです。きっと羌象ってそういった人だろうな、と。そんな彼女の強い覚悟を感じた時に、自分より精神年齢のはるかに高い女性だと感じましたね。

山本千尋

羌瘣に対する〈愛〉に真っ直ぐな姉だったんですね。

そうですね。実際に清野さんにお会いして、私自身も羌象のような気持ちになりました(笑)。『キングダム』という作品で大きなプレッシャーもある中で、覚悟を決めて頑張っている清野さんの姿を見てものすごく影響を受けましたし、極力サポートしたいとも思いました。ご一緒した期間は短かったのですが、戦場に羌象のいないシーンでも羌瘣の心の拠り所になれていたらいいな、と。

武術の世界から芸能の世界へ飛び込んだ山本さん、
蚩尤族の世界から
外の世界に飛び込みたいと願った羌象、

お2人にはリンクするところもあるのかな、と
感じました。

芸能のお仕事の最初の現場は、カメラの前に立つこと自体が初めてで、右も左も分からずに戸惑っていたことを覚えています。ただ、私は本当にありがたいことに周りの人に恵まれていて。初出演の映像作品『太秦ライムライト』(2014)は、太秦の古き良き撮影所での撮影だったのですが、そんな素敵な撮影所で、時代を生き抜いてこられた先輩の皆さんが新人の私の芝居を見守ってくださっていて。17歳の恐れ知らずの私は、とても無邪気に撮影に参加させていただいたんです。大きな世界に出ていく私の後ろで見守ってくださる方々がいる、というのが今でも私の御守りになっているように思います。作品に入る時に悩むこともあるのですが、その方々がいてくださるという〈安心感〉、帰る場所がある〈温かさ〉に救われています。

山本千尋

温かさに見守られながら
山本さんが進む道に、
他の誰かの道がきっと照らされるはずです。

そうなれたらいいな、と思います(照笑)。中国武術の選手時代、武術を続けた先の将来が見えないことがあって「自分はどこへ行けばいいのだろう」という不安を抱えていたんです。きっと今、同じ悩みを持っている選手がたくさんいると思うんですよね。中国武術は好き、だけどどう進んでいけばいいのか分からない、みたいな。そういった子たちに私のような方法で武術を伝えていく道もあるんだよ、と見せることができたらいいなと思います。そしてゆくゆくは、作品を観て「自分もやりたい」だとか「ちょっと習ってみようかな」と、中国武術の文化に触れるキッカケにもなれたらな、と。

Dear LANDOER読者
映画『キングダム2 遥かなる大地へ』
From 山本千尋

現代を生きる私たちは実際に戦場にいるわけではないけれど、一人ひとりが仕事場や学校などの“社会”に形を変えた戦場で闘っていると思うんです。『キングダム』という壮大な物語の中で、私自身キャストの皆さんから自分の世界で闘っていくことの〈覚悟〉を教えていただきました。全世界に愛されている原作を実写化することへのプレッシャー、様々な声を全て理解したうえで皆さんの作品への〈愛〉を集めて、もっともっと大きな〈愛〉で作品に繋げたスタッフの方々の熱量や懸ける想い、それらを途中参加でもすごく感じましたし、この作品の中で争乱の世界に生きた彼女の生涯を生きることができて本当に幸せでした。コロナ禍で大変な中、こんなに大きな作品を作り上げられたチームの皆さんの“計り知れない〈愛〉と〈努力〉”が多くの方に届くといいな、と思います。